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  • 2017/08/29
  • AnimeandManga illustrated編集部

[牧野茂雄の自動車業界鳥瞰図] 日本はビークル・ダイナミクス分野の再構築を急げ

自動運転時代はビークル・ダイナミクスが主戦場になる

独・ティッセンクルップはダンパーメーカーのビルシュタインを傘下に持つ。この写真はダンプトロニックと呼ばれる伸び/縮みで独立した副室を持つ連続無段階可変ダンパー。すでにメルセデス・ベンツが採用している。チューニング自由度が極めて高いと言う。自動運転時代のVDは、サスペンション各輪垂直荷重の微妙な変化を演出し乗員に安心感を与えるという制御も当たり前になるか。静止状態ですでに過大な横力を受けている「動きの渋い足」など論外だ。
自動車技術はつねに規制に引っ張られてきた。「排ガス」「安全」の規制はクルマの姿を大きく変え、その影響力はなお巨大だ。一方、規制と関わりのない分野はコストを削られる運命にある。日本では車両運動制御=ビークル・ダイナミクス分野がおろそかになった。自動運転時代を明日に控え、これは愚挙ではないか?
(ジャーナリスト・牧野茂雄がレポートする)

5月に開かれた「人とくるまのテクノロジー展」は盛況だった。出展者数は過去最大。来場者は9万人を超え、主催者である公益社団法人自動車技術会の予想を上回った。その多くは自動車業界内の人および学生も含めた学術研究者だが、展示会に出かけて情報収集しようという機運が高まっているのはたしかのようだ。何か使える技術はあるか。ライバル他社は何をやっているのか。視察。観察。偵察……。自動車技術に特化した展示会に3日間で9万人が訪れる事実こそは、わが国自動車産業の規模を如実に物語る。全世界で年産2700万台。日本車の存在感は大きい。

また、この展示会は自動車技術会春季大会と合わせての開催であり、自動車技術者諸氏が日本全国から集う日でもある。春季大会がメインであり、分野ごとに論文発表がいくつもある。拝聴したいセッションがいくつもあったが、予定されている取材と面会をこなさなければならない身としては、後ろ髪を引かれる思いだ。論文タイトルを見るだけでも、日本の自動車技術がつねに前に進んでいることを実感する。

論文発表のテーマを分類すると、燃費、排ガス、その適合メソッド、軽量化、高度運転支援のためのセンサーや制御など、いくつかに集約できる。言い換えれば、ますます厳しくなるCO2および排ガスの規制強化への対応と、秒読み段階に入ったレベル3自動運転実用化のための技術である。

規制対応は否応無しであり、すべての自動車メーカーに共通したテーマだ。かたや自動運転は必須ではなく、自動車メーカーごとの関心度には微妙な温度差がある。ただし「この波に乗り遅れることだけは避けたい」という点では、非積極派を装っている自動車メーカー各社も同じ思いのようだ。

今回、個人的に新しい経験をさせていただいた。本誌はSVD(シニア・ビークル・ダイナミシスト)の会よりお誘いをいただき、会合にお邪魔させていただいた。車両運動性分野の研究開発に携わる技術者・研究者諸氏の会合である。本誌前号の特集でお世話になった神奈川工科大学・安部正人名誉教授が会長を務められる会だ。自動車技術会のVD(車両運動力学)セッションが行なわれた日の夜、日本のVD分野を引っ張る約50人が参集した。

安部名誉教授は冒頭、「VD分野でドイツ車を追い抜こうじゃないか」と声をあげられた。会場を見渡せば、私が常日頃から取材でお世話になっている方々が顔を揃えていた。ひと言で表現すれば「すごいメンバー」である。もし、この会のメンバーが一致協力し、その成果を非競争領域として日本の自動車産業界が共有したならば、すべての日本車は5年で生まれ変わるだろうと勝手に想像した次第である。考え方や商品の方向性に差はあっても、原理原則は共通である。最低限のお約束として共通の理念を持てばいい。競争はその先にある。

しかしVDは「得体の知れないもの」のように扱われる。排ガスや燃費のように数値目標では捉えにくいし規制対象ではない。だから、たとえ開発現場がその重要性を認識していたとしても、コスト配分では冷遇される。ある自動車メーカーでは「VD領域に充てられるコストは車両全体の10%以下」と聞いた。10%の根拠は「お客さんが求めているもの」だそうだ。

「 日本では燃費が最優先です。自動ブレーキのような安全装備が2番目です。近年はインターネットへの接続、いわゆるコネクテッドへの要求が高くなりました。従来のカーオーディオのような車載エンターテインメント装備としての要求です。ところが『走りのいいクルマ』を求めるお客さんは全体で10%以下です。車種によっては5%以下です。予算配分は自ずとお客さんの要求に引きずられるのですよ」

この事情はよくわかる。しかし、自動運転の実用化に向かう段階ではVDの総点検が必要になるはずだ。VDの基本、さまざまな車両挙動の発生要因をきちんと整理しなければ、お客さんに買ってもらえる自動運転車にはならない。私はそう考える。

自動運転では、カメラやレーダーなどのセンサーが捉えた情報をコンピューターが分析し、自車の「走り」に必要な指示をステアリングとパワートレーンに与える。ステアリング、エンジン、変速機は車速と進行方向とXYZ軸まわりの加速度を管理するためのアクチュエーターである。コンピューターの指示を正確にアクチュエーターが実行すること。これが第1段階である。指示と車両挙動の差異がある場合は適宜修正する。乗員に不安や恐怖を与えないような微修正を自動で行なうことが第2段階である。このすべてのアクチュエーションはVDの原理原則がベースになる。

いま、自動運転の分野はドイツ勢が先行している。これはほとんど国家戦略だ。自動車がドイツの名産品であり、ドイツ企業が持つさまざまな技術を搭載する技術産品プラットフォームとしてじつに都合がいい。

新しい素材、新しいボディ設計、新しい接合方法、新しい機械システム、新しい制御ソフトウェア、そして新しいデザイン。ドイツはすべて自前で用意できる。部品やユニットを日本企業から調達しても、最終製品がドイツ流であれば構わない。生産地がドイツ以外でも一向に構わない。コンセプトがドイツ流儀でドイツ系サプライヤーがティア1であればいい。もっとも新しい自動車を作り出すことが重要であり、世の中がその「新しさ」を認めてくれれば利益率と付加価値は自ずと高くなる。自動運転以上に新しいものはない。だから真っ先にやる。

もちろん、背景もいろいろある。取材すると
「アウトバーンの工事区間で車線誘導を自動化してほしいという声は多い」「認知判断能力が劣ってきた高齢ドライバーもクルマの運転はあきらめたくないと思っている。この層は増える一方だ」といった事情をよく聞かされる。同時に「既存の道路にどれだけのクルマを押し込めるかという交通管制、道路交通の効率化はもっと先の話。とにかく一番乗りすることが技術イメージにつながる」という正直論も聞く。

今回の自動車技術会春季大会のために来日した海外の研究者は私にこう言った。
(続きは次ページへ)

海外の研究者は私にこう言った

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