• 2018/09/17
  • AnimeandManga編集部

ホンダ・クラリティPHEVは、ジキル(EV走行)とハイド(ハイブリッド走行)。二面性を備えている

EV走行が「正規」でエンジンで発電した電力で走っているときは「非正規」

ホンダのPHEV、クラリティPHEVは、クラリティFUEL CELL、クラリティEV(日本には導入されない)と3つの電動パワートレーンのためのプラットフォームの上に構築された3兄弟でもっとも実用性の高いモデルだ。クラリティPHEVをジャーナリストの世良耕太氏が試乗した。
TEXT&PHOTO●世良耕太(SERA Kota)

 プラグインハイブリッド車は、バッテリーに蓄えた電気エネルギーでモーターを駆動する、いわゆるEV走行をしているときが「正規」の状態で、電気エネルギーがなくなり(いわゆる「電池切れ」を起こした状態)、エンジンで発電した電力で走っているときは「非正規」である。ほんの数百キロでしかないものの、ホンダ・クラリティPHEVと付き合ってみて、そのことを強く意識した。

エンジンは、アトキンソンサイクルの1.5ℓ直4DOHC。最高出力は105ps/5500rpm、最大トルクは134Nm/5000rpm。右に見えるシルバーのボックスがPCU(パワーコントロールユニット)。

 非正規とは言い換えてみれば非常時で、応急用タイヤに付け替えて走っているようなものだ。そんな状況で車両運動性能がどうこうと議論するのはナンセンスなのと同じように、クラリティPHEVがハイブリッド走行(基本的にはエンジンで発電した電力でモーターを駆動)をしているときに、やれエンジンがウルサイだのなんだの文句を垂れるのは筋違いなような気がする。応急用タイヤのグリップ力に難癖をつけるようなものだ。

 応急用タイヤを必要とするのは非常時であり緊急時だ。タイヤがパンクし、応急用タイヤを必要とするタイミングを予期することはできない。その時は突然やってくる。

 一方、バッテリーに蓄えた電気エネルギーが底を突くのは、クラリティPHEVを運転していれば予期できるし、応急用タイヤを必要とする機会よりもずっと多く経験する。だから、同列に論じること自体がナンセンスという意見もあるだろう。

走行用モーターは、184ps/315Nmだ。写真はPCU。

 それでもやはり、クラリティPHEVはEV走行をしている間が正規で、ハイブリッド走行をしているときは非正規の印象がぬぐいきれない。ジキルとハイド(原作を読んでいないのに例えに使っていることをお許しください)のように性格が一変するからだ。17kWhの容量を持つリチウムイオンバッテリーを搭載したクラリティPHEVは、JC08モードで114.6kmの充電電力使用時走行距離を誇る。

 WLTCモードでは101.0kmになり、実用上はこの数字のほうが近い。クラリティPHEVの購入を考えるなら、クルマを保管しておく場所に充電設備が整っていることを前提にしたい。そうして、EV走行を主に使うようにしたい。長距離を移動する場合は、ガソリンを使って数百キロは航続できる利便性の高さをありがたく受け止めたい。今回の短いドライブでは、電池切れ後のハイブリッド走行で24km/ℓ前後の燃費を記録した。燃料タンク容量は26ℓしかないが、航続距離を確保するには十分である。

 EV走行とハイブリッド走行ではジキルとハイドほどに性格が違うと書いたが、言い過ぎかもしれない。電池切れを起こしている状態で発進時にアクセルペダルを大きく踏み込むと、ドライバーの要求駆動力が大きいと判断して、エンジンはいきなり高回転で回りはじめる。そんなときはウルサイが当たり前だ。市街地を周囲の流れにのって走っているときにエンジンが始動した際などは、よほど音に敏感になっていないと、気づかないほどだ。EV走行を基本に日常的な使い方をしている限り、エンジンの存在を意識することはほとんどない。クラリティPHEVのハイドは引っ込み思案だし、ずいぶん性格は穏やかだ。

 蒸し返すようだが、クラリティPHEVがEV走行(モーターのみで駆動、が基本)とハイブリッド走行(エンジンが始動している)の二面性を備えていることは事実で、EV走行の静かさと気持ち良さを味わってしまうと、エンジンを始動させないような使い方をしたくなる。

 ところで、シフトセレクターの前方に「ECON」と「SPORT」「HV」の各種モード切り替えボタンが並んでいる。多分に個人の感想なのだが、モード切り替えが多すぎと感じた。多様な個人の好みに応えようとする親切心からこうなったのだろうが、やたらとメニューの多いレストランのようで、どれを選んでいいかわからない。「で、結局おすすめはどれ?」と聞いてみたくなる(でもクルマに乗り込んだが最後、聞く相手がいない)。

「当店の自慢のメニューはこれです!」と言えるだけの自信がないのだろうか、と勘ぐりたくなる。モード切り替えをたくさん用意するのは一見、ユーザーに対する親切心に見えるけれども、それぞれのモードを適切に仕上げるための適合に時間とコストがかかって、それが商品の価格に転嫁されるわけだ。その労力をもっと他のことに……というようなことを、たくさん並んだモード切り替えのスイッチを見て、つい思ってしまった。

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