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  • 2019/06/09
  • AnimeandManga編集部

NSXとRC213V-S──2台のホンダ製ハイエンドスポーツに試乗してわかったこと

Impression from Editor's room

それぞれ2370万円と2190万円のプライスタグを掲げるNSXとRC213V-S。前者はありとあらゆる最先端技術で武装して欧州のライバル勢に挑み、後者はまさに公道に放たれたMotoGPマシンそのものである。どちらもほかに類を見ないアプローチであり、極めて日本らしいハイエンドモデルの姿とも言える。ホンダが放った2台の超弩級モデルを駆り、プレミアムスポーツの在りかたを考える。

REPORT●永田元輔(NAGATA Gensuke)/小泉建治(KOIZUMI Kenji)
PHOTO●神村 聖(KAMIMURA Satoshi)

※本稿は2017年7月発売の「モーターファン Vol.8」に掲載されたものを転載したものです。クルマの仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

速さ、走りの楽しさ、そして使いやすさのすべてが備わっている

REPORT●永田元輔(NAGATA Gensuke)

 NSXの歴史は、挑戦の歴史だ。1990年に登場した初代、そして2016年に登場したこの新型。いずれも欧米のスーパースポーツカーに、日本車として殴り込みをかける——は言い過ぎにしても、その一角を占めたい、という挑戦として、生み出されたクルマである。そのための飛び道具として、初代は世界初のオールアルミボディ、そして新型は世界初のエンジン+3モーターによるトルクベクタリングを与えられた。新型が路上を走り始めて数ヵ月、その間に色んな人のさまざまな意見が飛び交っていたが、その内容は賛否両論、といったところだろうか。

 あらためて新型NSXに乗ってみると、こう言うと偉そうだがじつに良く出来ている。V6ツインターボエンジンはレスポンスも良く、吹け上がりの感触もなかなかにドラマチックで気分を盛り上げる。そして、やはり速い。クワイエットモードでも十分に速いが、スポーツモードにすればもうこれ以上は必要ない、というほどの加速を見せる。ただ、その加速感があくまでも冷静なのはハイブリッドの特性だろう。もっとも、これはこれで十分に新しさを感じさせる走りである。

 山道に行ってコーナーにさしかかり、ステアリングを切ってアクセルを開けて行く時、モーターによるトルクベクタリングAWDの効果を実感することができる。とにかくフロントの入りがやたらとシャープなだけでなく、インに向かってグイグイとノーズが入っていくのである。最近のスーパースポーツカーはAWDを採用する例も多いが、それらのステアリングを切った方向にかっ飛んでいく、という感じとはまたちょっと違う、まるでクルマが意志を持って曲がっていくかのような感じである。最初は驚くが、慣れると夢中になってコーナーを走っている自分がいる。

 この走りを支えている要因のひとつには、ボディ剛性の高さもある。アルミのスペースフレームによるボディは適度なしなやかさも感じさせながら路面からの入力を完全に受け止め、ドライバーとクルマの一体感を演出する。重量物を極力ボディの中心寄りに配置して実現したフロント42%、リヤ58%という前後重量のバランスの良さも相まって、コーナーでは自分を中心にクルマが回転しているかのような感覚だ。限界域でのクセを指摘する声もあるが、一般レベルで峠を攻めるくらいでは、そんな思いをすることもない。

 また日本車らしいのは、街中での扱いやすさだ。前方視界が優れているのはもちろんのこと、このクラスで後方がこれほど見やすいミッドシップスポーツは稀だろう。足の長いドアミラーはデザイン上のアクセントにもなっているが、側方視界の向上にも大いに役立っている。1940mmという全幅さえ頭に入れておけば、普段の使用にも十分に使えるはずだ。また、都内中心の走行で10km/ℓ台という燃費も、特筆すべき素晴らしさ。あと必要なのは、一時的にフロントの車高を上げるリフターくらいのものだろう。

NSXに足りないものは、自信と強さではないだろうか

 ただし、気になる部分もいくつかある。ほかのホンダ車と共有のようなウインカー&ワイパーレバーの質感の低さ。ビニール製で、しかも取り付けがグラグラしているサンバイザーの安っぽさ。差し込み式でしかもプラスチック製というドリンクホルダーのやる気のなさ。実用性の高さを謳いながら電動格納が備わらないので、駐車のたびに手でドアミラーを畳む情けなさ。いずれも現代の2370万円のスーパースポーツカーということを考えると、どうしても違和感を禁じ得ない。

 つまり、新型NSXにつきまとうネガティブな意見は、このあちこちから感じる“違和感”のせいではないだろうか。室内まわりや装備類だけでなく、最新モデルの割には斬新さ、新鮮さが薄いボディデザインもそうだし、頑張ってはいるもののエクステリアと同じく新しい提案性には欠けて、どうしても他のホンダ車との共通性を感じさせるインテリアも、このクラスのクルマの顧客には違和感として映るかもしれない。

 走りは確かに素晴らしいが、ステアリングを通じて得られる路面の微細なインフォメーションがやや希薄に感じられるのも、スーパースポーツカーとしては違和感であろう。実際に新型NSXに触れて、乗って、そして感動もしているのだが、その一方で新型NSXから受けるこれらの「何となく」の違和感は、心の隅に澱のように漂っている。

 今回、同時に借り出したRC213V-Sは2190万円という非常識ともいえる価格のバイクだが、そのような違和感が不思議とない。ボクはバイクに乗れないので眺める専門だが、「これはスゲえ」と素直に感動できる。NSXとRC213V-S。同じホンダの製品でありながら、この違いは何か。考えてみるに、それはつまり作り手側の「自信」の違いなのではないだろうか。

 ホンダは二輪メーカーの雄であり、MotoGPなどでの活躍を見てもわかるように、スポーツバイクで世界をリードする存在だ。RC213V-Sには、そんなホンダの自信が詰まっている。「イヤなら乗らなくていいよ」という、奢りともいえるくらいの迫力を感じる。エクスクルーシブな乗り物には、それくらいの強さが必要なのだ。それはもはや信仰に近いのかもしれない。

 NSXには、そこまでの強さがない。周りの顔色を窺っている雰囲気が、どうしても感じられる。そこもまた、エクスクルーシブな乗り物としての違和感につながるのだろう。そこには新参者への偏見もあるかもしれないが、ある種のブランドビジネスであるこのテのクルマの世界では、それもまた当然なのだ。

 しかし、NSXはまだ発売されたばかり。これから熟成と改良を重ね、NSXだけの世界を構築すればいい。初代NSXだって、個性が確立したのは3年後に登場したタイプRからだった。必ずしもその方向性は、ホンダの当初の予定通りではなかったかもしれないが。

■ホンダNSX
● 全長×全幅×全高:4490×1940×1215mm ● ホイールベース:2630mm ● 車両重量:1800kg ● エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ ● 総排気量:3492cc ● ボア×ストローク:91.0×89.5mm ● 最高出力:373kW(507ps)/6500-7500rpm ● 最大トルク:550Nm/2000-6000rpm ●前輪モーター最高出力:27kW(37ps)/4000rpm ● 前輪モーター最大トルク:73Nm/0-2000rpm ● 後輪モーター最高出力:35kW(48ps)/3000rpm ● 後輪モーター最大トルク:148Nm/500-2000rpm ● トランスミッション:9速DCT ● サスペンション形式:Ⓕダブルウィッシュボーン Ⓡウィッシュボーン ● ブレーキ:ⒻⓇベンチレーテッドディスク ● タイヤサイズ:Ⓕ245/35ZR19 Ⓡ305/30ZR20 ● 車両価格:2370万円

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