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  • 2017/12/29
  • GENROQ編集部

【年末特別企画】ポルシェ クラシックの世界①幻の”901”#57のレストア

最後の”901”の、発見からレストアまでのストーリー

Porsche 901 #57
2017年5月11日に記念すべき100万台目がラインオフしたことで話題となったポルシェ911。その一方で、ツッフェンハウゼンにあるポルシェ・ミュージアムでは、911のルーツに立ち戻るもうひとつのプロジェクトが密かに進められていた。それが2017年12月14日から2018年4月8日にかけて開催中の特別展 『911(901 No. 57)——レジェンドのテイクオフ』に展示されることとなった1964年型ポルシェ911のレストア・プロジェクトだ。

REPORT◎藤原よしお(Yoshio Fujiwara)  PHOTO◎ポルシェジャパン/藤原よしお

ポルシェ911は、同社初の量産モデルとなった356の後継車として1963年9月12日に“ポルシェ901”として発表された。しかしながらポルシェ初のモノコックシャシー、4輪ディスクブレーキ、完全新設計の空冷水平対向6気筒エンジンなど、様々な新機軸の開発と塾生が難航。結局、量産型の生産がスタートしたのは発表から1年以上が過ぎた1964年9月14日のこととなった。しかも当初予定していた“901”という名が、市販寸前の10月にプジョーから訴えられたため、急遽911へと変更されたのは有名なエピソードだ。

実はポルシェ社内でも正確な数を把握していないというが、1964年に“901”として製造された台数(発売時には911とされた)は82台と言われている。そのうちの何台かは今も愛好家の元で現存しているが、本家ポルシェ・ミュージアムが所有している最も古い911は1965年型の302 503で、オリジナル901の確保は彼らにとっても大きなテーマのひとつになっていたという。

その転機になったのが、2014年に放送されたドイツのお宝発掘番組だ。老メカニックが長年放置してきた多数のクルマを手放したいという情報を受けた番組スタッフが、2台の朽ち果てた911を発見。その鑑定をポルシェ・ミュージアムに依頼したところ、そのうちの1台が1964年10月22日にラインオフした3台の901のうちの1台であるシャシーナンバー300 057ということが判明したのだ。しかも10月22日はフェリー・ポルシェが911への車名変更を承認した日。つまりNo.57は“最後の901”ということになるのだ!

左右のフロントフェンダー、ドア、フロントバンパーなどが欠品だったものの、老メカニックの希望をはるかに上回る10万7000ユーロでNo.57を購入したポルシェ・ミュージアムでは、早速細部の検証とレストアを開始。

ボディの各部は隈なく錆びつき、フロアなどに雑に修復された跡などがあったが、幸いにもインテリアに致命的な欠品はなかった。またフラット6ユニットもエンジンナンバーこそマッチングではなかったものの、同じ1964年仕様のエンジンが搭載されているなど、意外なまでにオリジナリティが高いことが確認された。

発掘直後のNo.57。前オーナーの老メカニック氏自身、その価値と希少性を十分に理解し、老後の楽しみとしてレストアすることを夢見て、ドナー用の1968年型911L(これもミュージアムに引き取られた)とともに1971年から所有 していたそうだ。

「当時の901はまだ製品が安定しておらず、このNo.57がデリバリーされたのも製造から1ヶ月ほど経った11月27日のことです。テスト中に不具合がおき、途中でエンジンを載せ替えたのかもしれません」

というのは、このレストア・プロジェクトの責任者であるアレクサンダー・クライン。彼らがこのNo.57の歴史的な価値を尊重し、ただ綺麗にするのではなく、可能な限りオリジナル部分を残す方向で作業を進めることを決定するのに長い時間は必要としなかったという。

まず可能な限り丁寧に分解された901は、エンジン、ギヤボックス、足まわり、内装、電装、ボディなど、それぞれのパートに分けられて作業を開始。

中でもダメージの酷かったボディは、細部の状況を知るためにもサンドブラスト処理するのではなく、薬品に浸けて表面を剥離するというイレギュラーな方法が採られた。その際、事前にリヤシート下のパネルからオリジナルのシグナルレッド(カラーコード6407)のサンプルを採取しておいたことは、言うまでもない。

放置状態だったこともあり、シートは破け、インテリアも埃とカビだらけだが、シフト周りのレザースリーブ、ウッドステアリング、シートフレームなど、1964年のみの貴重なディテールが残されていたのも、ミュージアムが引き取る決め手になった。

この剥離の結果、フロントセクションおよびインパネ裏に300 057の刻印が確認できたうえ、各部に研磨やハンダの跡が残るなど、オリジナリティの高いボディであることが証明された。またフロアに補修跡があるものの、大きな事故などを起こしていないことも確認されている。

そこで彼らは補修するシートメタルの材質、厚さなどがオリジナルと異なることを嫌い、ドナーとして1965年型の911を入手(!)。傷んだフロアなどを移植し、オリジナル通りに修正したほか、各部のチリもパテを使わずハンダを盛って調整するなど、形状だけでなく技法に至るまで当時を再現してみせた。

あわせて各メッキパーツやウインドウ類も、細かなチッピングを取り除き、磨き直すことで再使用。失われていたフロントバンパーのオーバーライダーや、痛みの激しかった灰皿など1964年型特有のディテールは、設計図や現物を元に3Dプリンターを駆使して復刻するなど、コストを度外視した徹底的な作業が繰り返された。

1965年のボディをドナーとするなど、形状はもちろん材質も可能な限りオリジナルに近づけるという、細心の注意を払って行われたボディのレストア。細部のチリ合わせもパテではなく、当時と同様にハンダを盛って行われた。

それはエンジンなどパワートレインや、内装でも徹底されているのだが、もうひとつ今回のレストアに課せられた重要なテーマがあるとクラインは付け加える。

「オリジナルが大事なのは確かですが、全てにおいて安全性が優先します」

そのためハーネスは911 Fシリーズ用のリプロダクションに総取り替え、コルク製のヘッドガスケットは現在の素材に変更。またボディは恒久的に保存するため991のラインを止めて陰極ディップコーティングの防錆処理が施されているほか、ボディカラーもオリジナルに調色した水性塗料が用いられている。

いずれにしろ、ボディ修復に12ヶ月、エンジンO/H120時間、塗装300時間を含む3年という月日を経て901 No.57は復活した。これによりポルシェ・ミュージアムのコレクションに欠けていた重要なピースのひとつが埋められることとなったのである。

痛みの激しいボディをサンドブラストすると、余計にダメージを与えかねないので薬品に浸けて表面を剥離するというイレギュラーな方法が採られた。ボンネットやルーフなどの傷みも少なく、モノコック自体の状態も想像以上によかった。
基本的にオリジナルのディテールと工法を忠実に再現した今回のレストアだが、時流に合わせボディの塗料は水性塗料を使用。またボディ自体も陰極ディップコーティングによる完全な防錆処理が施された。
磨き直すことで再使用されたウインドウやメッキ類。ただ直して綺麗にするのではなく、個体それぞれのストーリーも大切ということで、ウインドウに貼られていた“バーダル”のステッカーは残された。

一見同じ空冷フラット6に見えるが、オイルポンプの位置、エアクリーナーの形状、各部のボルトや取り回しなど、1964年型のみの特徴が多い。手前のフードキャッチがつくパネルの形状もまったく違う。
エンジン下周りのレストアも完璧。エキゾーストパイプ、ヒートエクスチェンジャーなどの形状も1964年型には様々なバリエーションがあるそうで、試行錯誤を重ねたプロトタイプとしての色が濃い。

室内はカーペットなどもオリジナルと同じ素材を使用。また朽ちていたルーフライニングも新品に交換されたが、たまたま本社に残っていた当時のツールを使い当時と同じ正方形の穴のパターンが再現されている。
ピストンとシリンダーが固着し、クランクシャフトも錆びついていたが、致命的な欠品がなかったフラット6は120時間かけてフルO/H。特徴的なソレックスのダウンドラフト・キャブレターなど、補器類も丁寧にO/Hされた。

ポルシェ・ミュージアムでは2017年12月14日から2018年4月8日まで、『911(901 No. 57)——レジェンドのテイクオフ』と名付けた特別展を実施中。No.57の実車とともに朽ちたオリジナルパーツも展示される。

Porsche 901 #57

《予告》【年末特別企画】ポルシェ クラシックの世界②ポルシェ クラシックのレストア(12月30日 19:00 頃 公開予定)

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