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好き嫌いは別にしても、メルセデス・ベンツSクラスが高級車の代名詞であることに今さら異論をはさむ人はいないだろう。世にはロールスロイスとかベントレーといった「超」ハイエンドサルーンもあるけれど、フツーの人───たとえば近所のおばあちゃんや女子高生も含めれば、「ベンツ」の知名度に勝るものはない。
で、そんな高級車の横綱の燃費を計ってみようと思ったのである。実際にSクラスのオーナーになれるような富裕層のみなさんが燃費など気にしているのかどうかはよくわからないが、給油するのが面倒くさいからなるべく長い距離を走ってほしい、くらいには思っているだろう。一方、我々のように縁のない人間にとっては興味本位ながらおおいに知りたいところであったりする。少なくとも筆者はそうだ。
今回のテストに供されたのは、S560の4マティック・ロングである。最も燃費の良さそうなV6を搭載するS400ではなく、ラインナップの中心となるV8を搭載し、さらには駆動方式はAWDでボディはロング仕様という、けっして燃費に有利ではないグレードだ。カタログに載っているJC08モード燃費は9.0km/L。さてどこまでカタログ燃費が本当なのか、じっくり検証してやろうじゃないか。
こういった中央車線がポールで区切られただけの二車線区間(片側一車線)では、アクティブステアリングアシストがとっても有用だ。大型トラックとすれ違う場面などにおける不安や緊張が大きく軽減され、結果的に長距離ドライブの疲れを抑制してくれる。
東京を出発し、東名高速と新東名を経てひたすら西を目指す。高速道路でのSクラスは、今さら言うのもなんだがとにかく乗り心地がいい。数日前にパッケージオプションのAMGライン装着車、すなわち19インチ仕様に試乗しており、その圧倒的に高いボディ剛性とタップリと採られたサスペンションストロークがもたらすフラットなライドフィールに感心させられたのだが、今回の18インチ仕様にはそこに加えてフランス車的なまろやかさまで加わっている! S560はエアサスペンションが標準装備されるのだが、タイヤと車体の間に空気の層があるというより、そもそもタイヤが地面から浮いていて、不快な突き上げをシャットアウトしているような感覚である。そして18インチ仕様のほうがその傾向が強い。かといって接地感が希薄だとか、フワフワした乗り心地というわけではなく、ルーフの上から巨人の手かなんかでググッと下に押しつけられ、タイヤと路面の間の空気の層がギュッと圧縮されているようなイメージだ。だから路面の状況は雑味が濾過された状態でドライバーに伝わってくる。Sクラスだからといって崇め奉りたくはないが、こういう乗り味を見せつけられると、さすがメルセデスとひれ伏しそうになってしまう……。
そんなこんなでクルマに慣れてきたところで、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックを起動させる。メルセデス・ベンツのディストロニックの制御に非の打ちどころがないのは今に始まったことではないが、ディストロニックと連動して起動するアクティブステアリングアシストの秀逸な制御には誰もが舌を巻くだろう。
これは車線、ガードレール、前走車などを車両が認識し、カーブに合わせてステアリング操作をアシストしてくれるもので、ウインカーを出せば車線変更もアシストするアクティブレーンチェンジアシストを付随する。そのアシストっぷりが実に滑らかで、他ブランドの同様のシステムのほとんどが白線でバウンドするピンボールのようにカクッカクッとアシストするところを、Sクラスのそれは白線に沿って綺麗な曲線を描くようにアシストをしてくれる。手はステアリングに軽く添えていればいい。
個人的に、このアクティブステアリングアシストが最も効果を発揮すると感じられた場面は、中央分離帯がなく、センターラインにポールが立てられているだけの二車線区間(片側一車線)である。大型トラックとすれ違うときや暗いトンネルの中など、圧迫感や不安感が最小限に抑えられ、緊張がほぐれることで疲労の抑制にもつながる。ロングドライブにはとても有用なシステムだ。
東名、新東名、伊勢湾岸道、新名神、名神を経て、京都縦貫道の園部インターチェンジからは一般道へ。美山から宿泊地である宮津までは高速道路を使わず、ワインディングロードを堪能した。
豊田東ジャンクションからは伊勢湾岸道に入り、新名神、名神を経て京都縦貫道に入る。そして最初のチェックポイントである園部インターチェンジで降りて、燃費を記録する。ここまで高速道路を488km走り、平均速度は107km/hで、平均燃費は12.6km/Lと出た。いきなりのJC08モード越えである。まぁ、高速道路だし、とくに欧州車はカタログ燃費と実燃費の乖離が少ないと言われているから、とくに騒ぐ必要もないのかも知れない。だが全長が5mを超え、全幅も1.9mに達し、車重が2.2tという超ヘビー級サルーンであることを考えれば、やはりリッター当たり12kmを越えるというのは優秀と言うほかない。
ちなみに乗員の体重は筆者が75kg、カメラマンが73kgで、カメラ機材と荷物を合わせた重さが約40kgである。エアコンは全行程を通じて24℃に設定していた。
ここからは一般道で250kmほど走ることになる。茅葺き屋根の古民家で知られる美山の北集落まで、そしてそこから日本海に面した宮津まではワインディングロードが続き、Sクラスの予想外の俊敏性を堪能することができた。四つのタイヤの位置が掴みやすく、センターラインのない狭隘路でのすれ違いにもストレスはなく、スポーツカーのような身のこなしについついペースを上げてしまう。19インチよりも限界は低いのかも知れないが、むしろ18インチのほうがタイヤのたわみからグリップ「感」を得やすく、少なくとも公道で許される速度域においてはこちらのほうが気分良く運転を楽しめると個人的には感じた。
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